ユニ・チャーム排泄ケア研究所 一人で歩ける方・介助があれば歩ける方の介護・リハビリについて
リハビリ紙パンツを使ったトイレ誘導・自立排泄支援を提唱しているユニ・チャーム排泄ケア研究所の船津が、排泄障害があっても外出すること、歩くことの意義とそのサポート方法についてご紹介します。
外出すること、歩くことの意義
病気の診療を終え退院したとき、私たちは「外出ができる状態」まで回復してはじめて、「病人」から「生活者」に復帰できたと実感します。
高齢者の場合、機能低下や急性疾患で入院する機会も増えてきます。そして、高齢者は病気を根治して退院できることよりも、後遺症で障害が残り、慢性期の療養生活を強いられることが多いと思います。家族には、障害に負けそうになる高齢者を、勇気づけていく介護が求められます。
目標をもたないリハビリテーションは成果が出にくいといわれます。「外出し、一緒に歩く」ことは、高齢者にリハビリテーションを動機付けることにつながります。
トイレを使うこと、トイレで排泄することは社会に参加していくための条件です。
「トイレが使えるようになったら一緒に散歩にいきましょう」。
高齢者と介護者が目標を共有することはリハビリテーションを推進していく上で大切です。トイレを使える力を取り戻すことは社会復帰の第1歩となります。
高齢者の生活を守る介護
1.生活することの意味
高齢者にとって「生活すること」は、「カレンダーと時計」をもつことだと思います。「カレンダー」とは予定があることです。
「洋服を買いにいくこと」「おいしいものを食べにいくこと」「友達と会うこと」たくさんの予定をカレンダーに書き込むことで生活を実感できます。
そして「時計」とは、1日の生活リズムです。
朝ご飯は8:00に食べる。午前中は散歩に出かける。昼食は12:00にとって、午後はお買い物。規則正しい生活習慣をつくることです。
高齢者にとって、外に目を向けて、自分自身の生活を充実させる設計がリハビリテーションです。
家族やお友達と「一緒に歩くこと」は、生活機能回復の原動力になります。
2.排泄の失敗で挫折しないサポート
自立排泄のリハビリテーションで高齢者本人が挫折してしまう原因のひとつに失敗があります。
トイレに向う途中で失禁してしまい廊下を汚してしまった。トイレで衣類を脱ごうとして間に合わず衣類やトイレを汚してしまった。こうした失敗に高齢者の自尊心は大きく傷つけられます。それがきっかけで、高齢者自身が挫折してしまうケースがあります。
自立排泄の支援において、この失敗を補うために、パッドやリハビリパンツの使用は欠かせません。
「失敗したって大丈夫、私がついているから。リハビリパンツを履いているから」介護者が失敗を咎めないことで、高齢者は勇気付けられます。
高齢者のリハビリテーションは「人間復権への挑戦」といわれます。
排泄障害を気にせず、家族と一緒に出かける、一緒に歩くことは、人間らしさを取り戻していく上で重要なステップといえます。
例え、外出先のトイレでうまく排泄ができなくても、トイレで衛生的に汚れたパッドの交換ができれば、社会参加の制約は克服できると思います。
寄稿:船津良夫(1998年~2017年 ユニ・チャーム排泄ケア研究所 主任研究員)
ユニ・チャーム株式会社 排泄ケア研究所
全国の施設・病院で排泄ケアの実態を調査し、リハビリ紙パンツを使ったトイレ誘導・自立排泄支援を提唱。さまざまな角度から排泄ケア理論の実践活動を行っている。