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米山公啓先生 一人で歩ける方・介助があれば歩ける方の介護・リハビリについて

認知症の予防、脳の活性化方法などを専門に執筆や講演を手掛けている米山先生に、"歩くことが脳によい"とされる理由や介護ケアについてのお話を伺いました。

歩くことは"脳"の活性化に効果的であると先生の著書にもありますが、なぜ、歩くことが"脳"にいいのでしょうか?

脳活性の方法として、新しいことを始めたり、旅行に行ったりするということもありますが、やはり日常生活の中で継続してできることが大切です。

その中でも"歩く"ということが一番始めやすいのではないかと思います。

歩くという運動は、太い筋肉を動かしているため脳への血流量が増えます。

脳への血流量が増えれば、血液と一緒に酸素とエネルギーの元になっているブドウ糖がたくさん運ばれるので、脳細胞が活性化していきます。

また、歩くことによって神経細胞のネットワークの回路を作る時に必要な物質(神経成長因子)が出てくるので、さらに脳へ良い刺激を送ることができるんですよ。

"歩く"を習慣づけるためのコツはありますか?

継続させるためには、楽しいという感覚がないと難しいですね。

これはリハビリでも言えることで、歩くことが楽しくなければ続かないかもしれません。

「リハビリのために歩かなきゃ、外に出なきゃ」という感覚ではなく、友達の家まで歩いてみる、公園のお花を見に行くなどの気持ちで歩いてみたらどうでしょうか。

そういった小さな目標を立て、達成した時の達成感、満足感を得ればドーパミンも出て、もっとやってみようという意欲が出てきます、そうなれば自然と継続して歩けるようになっていくんじゃないかな。

歩く距離や場所なども気を付けた方がいいのでしょうか?

毎日少しずつ15〜20分程度でもいいと思う。15分くらい歩いてくると、脳内モルヒネが出てきて歩いていることが快感になってくるんですよね。

そうなると苦しくなくなるから30分でも1時間でも歩けるようになってくるんですよ。

そして、歩ける環境が大事ですね、やはり安全な環境であるということ。

地域によっては、安心して歩ける場所がない方もいると思います。

そんな時は、私は「ライド&ウォーク」と言っているのですが、車に乗せて大きな公園へ行き、そこで歩いたりということも1つの方法ですよね。

単純に歩くだけではなく、それ以外の楽しみを見つけながら歩くことができればベストだと思います。

臨床医として多くの患者さんと接してこられた先生にとって、介護とはどんなものだと思われますか?

介護には正解がないということですね。こうすれば良くなるという事例本や医学書など多くありますが、全てが書いてあるように上手くいくとは限りません。

むしろ完璧な介護をしようと思ってもうまくいかない場合の方が多いんですよね。

それでも自分の努力が足りない、やり方が間違っているのではないか、と家族の方の悩みがどんどん膨らんでしまうケースが多く見受けられます。

そういう時は、デイサービスやホームヘルパーなど、第三者の力を借りるのもお勧めです。

介護というと、大変、負担があるなどマイナスなイメージがありますが、介護する側がラクできる方法があれば取り入れてみるべきだと思っています。

介護は大変な思いをしながら行っていくというものではありません。在宅介護以外のツールをもっと利用し、介護ケアに関する選択肢や可能性を色々考えてみるといいでしょう。

では、介護をする上で大切なこととはなんでしょうか?

手を出さずに見守る介護ですね。手抜きをするという訳ではなくてね(笑)。

決して過保護になりすぎないこと。

完璧な介護をしようと思うと、身の回りのお世話を全部してしまうことになってしまいます。そうすると、介護されている方の自由を奪ってしまうことにもなりかねないんですよね。

時間がかかっても自分で食べる、着替える、歩いて移動するなど、なるべく1人でできるように手出しをせず、危なくない限りなるべく見守ってあげる

これは、ちょっと難しい介護になるとは思うんですけれどね。

多少時間がかかっても諦めずに、自分の力でやってみるということがいいんだと思います。私も、普段から掃除、洗濯、炊事、ゴミ出しなども自分から楽しくやっています。

脳は人間が体を動かすことで進化するものですから、日常生活の中で自分でできる範囲のものは、なるべく自分が動いて生活をすることが大切なことだと思っています。

最後に、現在リハビリをされているご家族の方々へメッセージをお願いします。

前向きに希望をもって取り組むことですね。プラス思考にならないと脳も好転しにくいですからね。

いつかはこうなる、という気持ちを持つこと。例えば現状を維持していることもプラスと捉えることが大切、何にもなく過ごせたこと自体が自分達への評価であり何かを始められるスタートですからね。

目標設定も大きな目標ではなく、ちょっと頑張ればできるという目標を少しずつ達成し、それを喜びに変えていく。その積み重ねが、もうちょっと頑張ってみようという意欲が湧くことに繋がりますからね。

時間がかかってもいい、少しずつでもいい、ポジティブな気持ちで介護ケアに取り組んでみてください。

米山公啓(よねやま きみひろ)先生 医学博士、作家

神経内科。脳卒中、認知症、老人医療、健康論、医療経済などを専門とする。1998年聖マリアンナ医科大学第2内科助教授を退職後、診療を続けながら医療エッセーをはじめ、医学ミステリー、小説や実用書などの執筆、さらにはテレビ番組のコメンテーターや、講演活動など多岐にわたって活躍中。

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