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認知機能について効果を上げている活動にはどんなものがありますか?

絵本の読み聞かせボランティアなどがあります

シニアによる注目の活動「りぷりんと」

私が10年以上関わっているプロジェクトに、シニアボランティアによる絵本の読み聞かせ「りぷりんと」という活動があります。60歳以上のシニアが、幼稚園や保育園、小中学校、高齢者施設などで子どもたちや世代を超えた人々に絵本の読み聞かせを行う活動です。現在、東京を中心に、神奈川、滋賀、秋田まで展開しています。

「りぷりんと」がもたらす効果を研究したところ、さまざまなことが明らかになりました。

実演前は、いい緊張感があります。読んでいるときはメッセージを伝えようと意識します。そのために、事前に大きな声ではっきりと読む練習をするので、記憶力、言語能力、発声が鍛えられます。

練習の前にはもちろん本の選定があります。図書館に通い、対象年齢や季節などを考えて何万冊もある中から1冊を選ぶことは、かなり頭を使う作業です。

その選書には、前回の反省も活かされています。反省会では、この本は難しかったからもう少し上の学年のときに使おうとか、本を持つ手が曲がっていたからしっかり支える練習をしようといった課題も話し合っていきます。

このサイクルが回ることで、参加する人たちの認知機能に良い影響をもたらしています。絵本に限らず、このような刺激のある活動が日常的にあるかないかで、10年後、20年後に大きな差が開いてきます。

50代、60代への効果も明らかに

「りぷりんと」はボランティア活動ですが、これをもとにした認知機能低下抑制プログラムも開発しています。ボランティア活動はしませんが、絵本について語り合ったり、柔軟体操や呼吸法などで読み聞かせに必要な体力をつけたり、滑舌の訓練を行うというものです。

このプログラムの参加者を調査した結果、もともともの忘れがある、ないに関わらず、記憶力が向上するという効果が明らかになりました。興味深いのは、50代、60代の若い世代を含めて記憶力が向上しているという点です。

現在、脳のトレーニングの研究で一番の課題は長期効果です。3か月で上がった機能は3か月で収束すると言われているほど効果の持続は難しいとされていますが、このプログラムでは、6か月かけて向上した機能が、1年半後にも低下していなかったという結果が得られています。

絵本の読み聞かせは一例ですが、受け手がいる、地域への貢献にもつながるといった活動の広がりは今後も期待できます。ぜひ自分に合った社会参加活動を見つけて、楽しんでみてはいかがでしょうか。

鈴木宏幸

東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加と地域保健研究チーム 研究員。中央大学大学院文学研究科心理学専攻修了 博士(心理学)。平成20年より東京都老人総合研究所の非常勤研究員として、高齢期における社会参加活動と認知機能の関連に関する研究に従事。同時に、当時の東京都老人医療センターもの忘れ外来にて、受診患者の認知機能評価に携わる。平成24年4月より現職。社会参加活動と心身の健康に関する研究や、認知機能評価検査の開発・認知機能低下抑制を目的とした社会参加活動に関する実践的研究に従事。

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