毎日の歯みがきで認知症対策。オーラルフレイルにも要注意。
食べる、話すなど、私たちが生きていくうえで欠かせない役割を持つ「口」。その健康を保つことが、実は全身の健康や認知症予防において非常に重要であることが明らかになってきました。年齢を重ねても活動的な日々を送るために、今からできるケアについて、口腔機能における第一線の研究者である渡邊裕先生に話を伺います。
認知症と口の健康には、どんな関係があるのですか?
全身の健康や、人と会う、話すことにも関連するので、認知機能にも大きな影響を及ぼします
歯周病から、認知症リスクを高める病気へ
私たちの体には多くの細菌が存在しています。なかでも常に細菌がいる場所は鼻、口、腸の中などです。腸内などで体を守る細菌もいますが、悪影響を及ぼす細菌もいます。それが、歯ぐきの「炎症」を起こす歯周病原菌です。
この炎症を抑えるために、私たちは24時間365日、いつも免疫力を使って戦っています。歯周病が悪化すると、そこに免疫力を集中させる必要があり、一定の量しか存在しない免疫細胞は他に回らなくなっていきます。しかも年齢を重ねるほどに免疫細胞の機能は低下するので、さらに足りなくなります。そのため全身の免疫力低下が起こり、歯周病も進行するという悪循環に陥るのです。
さらに体の中にいつも炎症があると血管が障害されて、動脈硬化が進みます。また、炎症によってサイトカインという化学物質が発生し、そのために血糖を下げるホルモンであるインシュリンの働きが悪くなるので糖尿病にもつながります。
糖尿病と動脈硬化は、認知症になるリスクを高める病気として知られています。つまりその発症には、歯周病が深く関わっているのです。
歯が減ることで栄養バランスが崩れる
歯周病によって歯が減ることも、さまざまな問題を引き起こします。まず、繊維質の多い野菜や肉などが食べにくくなるので、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維といった栄養素が不足します。これにより、体調を崩しやすくなるだけでなく筋肉や骨も弱くなります。その結果、活動量が減って人とのつながりも少なくなり、認知機能に影響を及ぼしていくのです。
一方で、柔らかくて食べやすい菓子パンやうどんなどを食べる割合が増えていきます。また、きちんと噛めないと味を感じにくくなるので、味付けが自然と濃くなります。こういったことが糖分や炭水化物、調味料の摂りすぎにつながって糖尿病や高血圧の原因となり、これも認知症のリスクを高めていきます。
見た目が変わることも影響が
歯が減ることで歯並びが乱れたり、出っ歯になったりして見た目に自信がなくなると、人と会いたくなくなるものです。食事をすると歯に食べ物が挟まる、口臭が気になるといった不安も、人とのつながりを避ける要因になります。そうなると、意欲の低下やうつなどで認知機能が衰える可能性が高くなります。
さまざまな病気や筋力の低下、容姿の変化を引き起こす歯周病。その大きな影響を理解して口腔ケアをしっかり行なうことができれば認知症予防につながります。
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認知症予防を知ろう
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