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  3. 認知症を予防しよう:診断と予防の重要性が高まる今、認知症の緩和や改善に着目(1)

診断と予防の重要性が高まる今、認知症の緩和や改善に着目。

日本の認知症の患者数は500万人を超え、今後も増え続けて2025年には700万人に達すると予想されています。治らない病気といわれていますが、認知症も早期診断、早期治療は非常に重要です。改善や進行の緩和が期待できるようになっている認知症の現状について、認知症診断・治療の最前線に携わる石井賢二先生に話を聞きました。

認知症はどのように診断するのですか?

あらゆる角度からの検査、診断を総合的に判断することで「治る認知症」も見つかります

認知症はさまざまな病気で引き起こされる

認知症は、ひとつの病気ではありません。脳の細胞が減少したり、働きが悪くなったりすることによって、記憶や判断力の障害が起こる症状を総称する病名です。日常的な社会生活や対人関係などに障害が生じる認知症を引き起こす病気はたくさんあり、原因は100以上あるといわれています。

認知症の原因としては、脳の血管がつまったり壊れたりして起こる「脳血管障害」と脳の神経が自然に萎縮して起こる「脳変性疾患」が代表的なもので、その他にも感染や外傷などが原因になります。脳変性疾患には「アルツハイマー病」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」などがあります。このなかで「アルツハイマー病」は、日本をはじめ世界のどこの国においても認知症の過半数を占める重要な病気です。

認知症の原因となる病気の例

脳血管障害 1

脳変性疾患 2

その他 3

早期診断と早期予防が重要

認知症には、治療可能なものもあります。頭をぶつけて脳と頭蓋骨の間に血液がたまる「慢性硬膜下血腫」や脳室が拡大して起こる「正常圧水頭症」は、手術によって治療することができます。また、病気治療のために服薬している薬が原因になることもあり、服薬をやめることで、症状が改善することもあります。

また、認知症の中心的な原因となっているアルツハイマー病ですが、突然発症するわけではありません。症状が進み認知状態になった場合を「アルツハイマー型認知症」と呼びます。初期段階で発見し、早期の対策をとることで、発症を遅らせたり、緩和することが可能となってきています。早めに医師の診断を受けましょう。

あらゆる角度からの診断と検査ができる専門医への受診がおすすめ

認知症には、いろいろな原因があることから、最適な治療のためには専門医への受診がおすすめです。最近では「もの忘れ外来」という専門科のある病院が増えています。その他では、神経内科や精神科、地域によっては脳外科が認知症の担当科になっています。原因が千差万別の認知症は、あらゆる角度からの診断と検査ができる専門性を重視しましょう。

認知症が疑われる場合は、「病歴や身体所見」「認知機能のインタビュー検査」「画像診断」を中心に、その結果を総合的に判断し、診断されます。もちろん、血液や尿検査、レントゲンなどの一般検査による合併症の評価なども同時に行うことで、原因が特定されます。

病歴については、本人とその人を身近で見ている家族の両方から話を聞きます。状態や症状を客観的に見ている家族は、いつ頃からどのような症状がで始めたかをノートに書き留めておき、受診に同行する際に持参すると、より正確な診断となります。

最近は画像診断が進んでいると聞きますがどのようなものがあるのですか?

CTやMRIだけではなく早期発見に役立つ最新画像診断は注目です

テストや問診などによる認知症の検査

認知症の診察時には、まず認知機能テスト(心理検査)を行います。これは、認知症の有無や症状の進行程度などを調べるためのものです。短時間で実施できるMMSE(ミニ・メンタルステート試験)やHDR-S(長谷川式スケール)などが広く使われていますが、必要に応じてより詳しい複雑な検査も行われます。また、病歴や薬剤の服用歴の情報を得る問診とともに、血液検査などを行うことで認知症の原因となる病気などを発見していきます。

CTやMRIだけではない最新画像診断とは

問診や認知機能テストの結果から認知症が疑われる場合は、次に脳の状態を調べる画像検査が行われます。まず基本的には、CTやMRIなどでの検査です。これは、脳の形を見る「形態画像」診断で、脳の萎縮の程度や病変がどのくらいまで及んでいるかなどを確認できます。もうひとつ、「機能画像」診断といわれているのが脳血流SPECTやPETです。脳の機能低下を引き起こす箇所での血流状況や原因物質を発見できる診断です。

MRI検査で脳の萎縮が見られない場合でも、脳血流SPECTでの検査で血流状態が悪く、障害が起きている部分を発見できるというケースもあります。認知症医療が大きく進歩した背景には、このような最新画像診断があります。

認知症の過半数を占めるアルツハイマー病には、脳の中に2つの変化があることがわかっています。ひとつは脳の中に出現するシミ。これは「老人斑」と名付けられています。もうひとつは、神経細胞が縮んでその中に線維状の物質がたまる「神経原線維変化」です。いずれも脳の中にたまったタンパク質の“ゴミ”であることがわかっています。老人斑のもとになるゴミは「アミロイドβ」であり、神経原線維変化のもとになるゴミが「タウ」と呼ばれています。

早期予防や治療を可能にしている画像診断の進歩

タンパク質のゴミは、なぜたまるのでしょうか。ひとつは生産と除去のバランスです。アミロイドβもタウも、誰もが脳に持っており、脳の働きや構造に必要なものと考えられています。私たちの体の新陳代謝と同じように、古い物質が新しい物質に置きかわっていけばいいのですが、バランスが崩れることで古い物質が増え続けていきます。そして、たまったアミロイドβとタウは固まり、性質が変化してしまいます。これが脳の中のゴミであり、アルツハイマー病の発症につながっているのです。

最新の画像検査であれば、何の症状も出ていない状態でも、血流の異常や老人斑を発見することができるようになりました。将来は、この診断に基づいて早期予防や認知症の発症を抑えることが可能になると期待されます。

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