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特別な栄養素よりも「バランスの良い食事」

今、「認知症予防になる」といわれる栄養素や食べ物の情報があふれています。しかし、実際はどうなのでしょうか。日々の栄養状態が認知症にどう影響するのか、どんな食事が予防につながるのか、健康寿命を延ばす食生活について第一線で研究されている新開省二先生に話を伺います。

認知症予防に効く栄養素って、あるのでしょうか?

効果的とされる栄養素はあります。しかし、総合的にバランスの良い食事をとることが大切です

青魚や野菜・果物、香辛料の栄養素も

認知症の原因のひとつは、脳内のアミロイドβタンパクの蓄積です。それを抑制することがわかっているのは、青身の魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)といった多価不飽和脂肪酸、野菜や果物に多く含まれるポリフェノール、お茶に含まれるカテキンといった抗酸化物質、胡椒やターメリック、クルクミン、唐辛子、生姜といった香辛料などです。

<認知症予防に効果があるとされる栄養素・食事>

青身魚に含まれる多価不飽和脂肪酸

青身魚に含まれるEPAやDHAといった多価不飽和脂肪酸は、血液をサラサラにする作用があります。また、脳に十分な栄養と酸素を送り込める血管をつくり、認知症の予防に効くとされています。特に、魚の摂取が少ない海外で注目されています。

根拠論文:J Neurosci, 2005; 25: 3032-3040.

オリーブなど、地中海式の食事

地域住民を広く調べた疫学調査では、肉、魚、色の濃い野菜、オリーブなど地中海式の食事をとる人に認知症が少ないことが明らかになっています。特にオリーブは、日本人に不足している一価不飽和脂肪酸を豊富に含んでおり、効果が期待できます。

根拠論文:Arch Neurol, 2006; 63: 1709-1717. 

ワインやお茶などの抗酸化物質

野菜や果物、ワインなどに多く含まれるポリフェノール、お茶に含まれるカテキンなどの抗酸化物質は、体の酸化(老化)を防ぎ、認知症の要因となる脳内のアミロイドβタンパクの蓄積を抑制することが知られています。直接的に効くというより、老化を促進する体内の酸化物質の発生を抑え、間接的に認知症を予防するとされます。足腰等の身体機能の維持・改善にも効果的です。

根拠論文:Ann N Y Acad Sci. 2017 Aug 16. doi: 10.1111/nyas.13431. Am J Med, 2006; 119: 751-759

完全栄養食に近い牛乳

福岡県久山町の住民を疫学的に長期追跡調査する九州大学の久山町研究では、牛乳を毎日飲む高齢者の認知症リスクが、飲まない高齢者の半分くらいと結論されています。牛乳は完全栄養食品に近く、これに含まれるマグネシウムやカルシウムなどが認知機能の低下を抑制しているとの研究も海外に多数あります。日本人は脂質の摂取が少ないので、それらを含む牛乳は効果的です。

根拠論文:J Am Geriatr Soc, 2014; 62: 1224-1230.

食欲をそそる香辛料

胡椒やターメリック、クルクミン、唐辛子、生姜などの香辛料には、アルツハイマー型認知症の原因であるアミロイドβの蓄積を抑制する成分があり、動物実験ではそれが沈着しにくいことが確認されています。ただし、人間では証明されていません。それでも食欲をそそるので、栄養状態を向上させるのに効果があります。

根拠論文:J Biol Chem, 2005; 280: 5892-5901

昔ながらの伝統的な和食

東北大学のグループは疫学調査で、和食が認知症予防に効果的だという論文を発表しました。和食が、ディスエイブリングディメンシア(障害ある認知症)と呼ばれる、介護保険の認知症の日常生活判定基準2以上でかつ要介護以上の高齢者、すなわち認知症要介護者を抑制するとしています。

根拠論文:J Gerontol A Biol Sci Med Sci、2016;71:1322-1328.

貝類などに含まれるビタミンB12

ビタミンB12が不足すると、認知症の症状が生じることが以前から知られています。不足が把握されないまま、認知症治療を受けているケースがありますが、血中のビタミンB12濃度を調べ、不足している場合には、これを補充すると認知症の症状が改善します。

根拠論文:Am J Clin Nutr, 2017 Aug 2. Doi: 10.3945/ajcn.117.157834

血中のアルブミンなどのタンパク質

東京都健康長寿医療センター研究所は、タンパク質のうち、血清アルブミン値が高い人では認知機能が維持され、低い人はその低下速度が速かったことから、認知症になりやすいという論文を発表。血中のアルブミンとヘモグロビンが一定程度の水準にないと認知機能が低下することを疫学的に突き止め、認知症予防に効くタンパク質の量があることが示唆されました。

根拠論文:J Gerontol A Biol Sci Med Sci、2014;69:1276-1283.

ビタミン類の研究も

ビタミンE、ビタミンC、βカロチンの摂取は、アルツハイマー型認知症の発症を抑制するとの報告がある一方で、否定する結果も報告されています。

根拠論文:Exp Ther Med, 2015; 9: 1489-1493

特効薬的な栄養素は存在しない

このように、効果的とされる栄養素は多様で、結局のところ、これさえ摂っていれば予防できるというものはありません。しかも、栄養成分は私たちの体の中で互いに複雑に作用し合っていて、そのメカニズムはいまだブラックボックスです。

今言えるのは、効果的とされる栄養素を含め、総合的にバランスの良い食事をとることが重要だということです。

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