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認知症予防と栄養・食事の深~い関係認知症予防に特効薬なし!バランスの良い食事は認知症予防のキホン

「○○が認知症予防に効く」「○○を食べれば認知症にならない」。そんな情報が溢れていますが、認知症予防に効く栄養素や食事など、本当に存在するものなのでしょうか? そこで、そのあたりの最新の科学的根拠とともに、地域高齢者を実際に追跡調査する疫学的手法で明らかになった認知症予防のための食のあり方について、高齢者研究の第一線機関である東京都健康長寿医療センター研究所副所長(医師・医学博士)の新開省二先生にインタビューしました。

認知症予防に効果的な栄養素・食事もあるけれど…

栄養や食事は、認知症に影響を与えるのでしょうか?

栄養・食事が認知機能に関係していることは、国内外の多くの研究で明らかになっています。(表1)
例えば、ビタミンB12が不足すると、認知症の症状が生じることが知られています。また、有名なところでは、青身の魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)といった多価不飽和脂肪酸も認知症予防に効果的とされ、とくに魚の摂取が少ない海外で注目されています。
ほかにも、野菜や果物に多く含まれるポリフェノール、お茶に含まれるカテキンといった抗酸化物質も、体の酸化(老化)を防ぎ、認知症の原因となる脳内のアミロイドβタンパクの蓄積を抑制することがわかっています。
さらに、胡椒やターメリック、クルクミン、唐辛子、生姜といった香辛料にも、アミロイドβタンパクの蓄積を抑制する成分があって、実際に動物実験では溜まりにくかったことが確認されています。

表1 認知症予防に効果があるとされる栄養素・食事など

多価不飽和脂肪酸

青身魚に含まれるEPAやDHAといった多価不飽和脂肪酸は、ラードなどの飽和脂肪酸と異なり、血液をサラサラにする作用があり、脳に十分な栄養と酸素を送り込める血管をつくり、認知症の予防に効くとされる。とくに、魚の摂取が少ない海外で注目されている。根拠論文:J Neurosci, 2005; 25: 3032-3040.

地中海式の食事

地域住民を広く調べた疫学調査では、地中海式の食事をとる人に認知症が少ないことが明らかになっている。肉、魚、色の濃い野菜、オリーブなどが総合的に効くとされる。とくにオリーブは、日本人に不足している一価不飽和脂肪酸を豊富に含んでおり、有益である。根拠論文:Arch Neurol, 2006; 63: 1709-1717.

抗酸化物質

野菜や果物、ワインなどに多く含まれるポリフェノール、お茶に含まれるカテキンなどの抗酸化物質は、体の酸化(老化)を防ぎ、認知症の要因となる脳内のアミロイドβタンパクの蓄積を抑制することが知られている。直接的に効くというより、老化を促進する体内の酸化物質の発生を抑え、間接的に認知症を予防するとされる。これらは、足腰等の身体機能の維持・改善にも有益である。根拠論文:Ann N Y Acad Sci. 2017 Aug 16. doi: 10.1111/nyas.13431. Am J Med, 2006; 119: 751-759

牛乳

福岡県久山町の住民を疫学的に長期追跡調査する九州大学の久山町研究では、牛乳を毎日飲む高齢者は認知症リスクが飲まない高齢者の半分くらいと結論されている。牛乳は完全栄養食品に近く、これに含まれるマグネシウムやカルシウムなどが認知機能の低下を抑制しているとの研究も海外に多数ある。日本人は脂質の摂取が少ないので、それらを含む牛乳は有益である。根拠論文:J Am Geriatr Soc, 2014; 62: 1224-1230.

香辛料

胡椒やターメリック、クルクミン、唐辛子、生姜などの香辛料には、アルツハイマー型認知症の原因であるアミロイドβの蓄積を抑制する成分があり、動物実験ではそれが沈着しにくいことが確認されている。ただし、人間では証明されていない。それでも食欲をそそるので、栄養状態を向上させるのに有効である。根拠論文:J Biol Chem, 2005; 280: 5892-5901

和食

東北大学のグループは疫学調査で、和食が認知症予防に効果的だという論文を発表した。和食が、ディスエイブリングディメンシア(障害ある認知症)と呼ばれる、介護保険の認知症の日常生活判定基準2以上でかつ要介護以上の高齢者、すなわち認知症要介護者を抑制するとしている。根拠論文:J Gerontol A Biol Sci Med Sci、2016;71:1322-1328.

ビタミンB12

ビタミンB12が不足すると、認知症の症状が生じることが以前から知られている。不足が把握されないまま、認知症治療を受けているケースがあるが、血中のビタミンB12濃度を調べ、不足している場合には、これを補充すると認知症の症状が改善する。根拠論文:Am J Clin Nutr, 2017 Aug 2. Doi: 10.3945/ajcn.117.157834

血中のアルブミンなどのタンパク質

東京都健康長寿医療センター研究所は、タンパク質のうち、血清アルブミン値が高い人では認知機能が維持され、低い人はその低下速度が速かったことから、認知症になりやすいという論文を発表。血中のアルブミンとヘモグロビンが一定程度の水準にないと認知機能が低下することを疫学的に突き止めた。認知症予防に効くタンパク質の量があることが示唆された。根拠論文:J Gerontol A Biol Sci Med Sci、2014;69:1276-1283.

ビタミン類

ビタミンE、ビタミンC、βカロチンの摂取は、アルツハイマー型認知症の発症を抑制するとの報告がある一方で、否定する結果も報告されている。根拠論文:Exp Ther Med, 2015; 9: 1489-1493.

(新開氏のインタビューをもとに作成)

認知症予防に効果的な食事スタイルはありますか?

地域住民を広く調べた疫学研究では、地中海式の食事をとる人に認知症が少ないことが確認されています。肉、魚、色の濃い野菜、オリーブなどが総合的に効くとしており、とくに日本人に不足しがちな一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸を豊富に含むオリーブが有効と考えられています。著名な故日野原重明医師も毎朝、オリーブオイルを飲んでいたので、ご存知の人も多いでしょう。
九州大学の久山町研究では、牛乳を毎日飲む高齢者はアルツハイマー型認知症のリスクが半分程度だったことを長期追跡で突きとめ、脂質の摂取が少ない日本人には有益と指摘しています。
また、東北大学のグループは、日本型の食事パターン(和食)が認知症の発生を抑制するという論文(要介護認定の情報を分析)を発表しています。

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