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  3. 認知症を予防しよう:気の合う仲間と、人の役に立つ、相手に喜んでもらえるような取り組みに参加することが認知症対策には重要(1)

自分が楽しめる、人に喜ばれる交流を長く続ける。

今、社会に参加して人とつながることが、認知症予防の重要な要素として注目されています。さまざまな交流があふれている中、どのような形で人や社会と関わっていくことが望ましいのか、高齢者の認知機能と社会参加の関連について研究されている鈴木宏幸先生に話を伺いました。

人付き合いを増やしたほうが、認知症予防になりますか?

人とたくさん会えばいいというものではなく、つながりの” 質”も大切です

高度な認知機能を使う「約束」と「会話」

近年の認知症予防において、「社会参加」はとても重要な位置を占めています。その理由のひとつは、「約束」という面から説明できます。

生活のなかで記憶を使うシーンの多くは、「約束」にまつわることです。たとえばどこかで人と会う約束をすると、家を出る時間、準備する時間、交通手段を決めるなど、付随することにとても頭を使います。人と会うことが少なくなると約束も減るため、記憶力を使わなくなり、認知機能の低下につながってしまいます。

もうひとつ、「会話」という側面からみてみます。私たちは誰かと話すとき、1秒間に2つから3つの言葉を生み出していますが、このような言葉の選択を、相手の話に合わせたり、身振り手振りをみて雰囲気をつかんだりと、脳へさまざまな形でアクセスしながら行っているわけです。社会に参加するうえで欠かせない会話というのは、このように非常に頭を使う行為でもあります。

「ティラノサウルス」を最後に口に出したのは?

家族や友人、趣味のグループなど、多様なつながりを持つことが認知機能の低下を抑えることもわかっています。これは、それぞれに使う知識が異なることで、脳により多くの刺激を受けるためと考えられます。

例えば「”ティラノサウルス”という言葉を知っていますか?」と質問するとほぼ100%の人が知っていると答えますが、「口に出して最後に言ったのはいつ?」と聞くと、ほとんどの人が答えられません。このように、人の知識は普段使わないものが多くを占め、会話に使う言葉というのは限られています。

いろいろな種類の交流は、使わない知識へのアクセスの可能性を広げます。知っているけど使っていない、脳内でのネットワークが薄くなっているような知識でも、会話に出てくることでそのルートが強化されると考えられます。

※「つながり」の中に挙げられている「結婚」「電話・手紙」「教会」などはつながりの一例として取り上げた項目であり、このつながりを推奨するものではありません。つながりの「数」による違いを示したデータです。

ストレスのない関係を楽しむ

しかし、多くの人と会えばいいということでもありません。

50歳以上を対象に「社会的孤立(パートナーがなく、人と会う機会が月に1回未満)」という人たちと、「孤独(パートナーや家族の有無に関わらず、寂しさを感じている)」という人たちについて4年間追跡調査したところ、「社会的孤立」では言語流暢性と記憶力の低下がみられました。人と会っていないために言葉がすらすら出てこない、覚えが悪くなるといった結果につながっていると考えられます。

そして「孤独」のグループは、言語流暢性の低下はみられませんでした。人付き合いがないわけではないので、会話はしているためだと考えられます。しかし、記憶力の低下はみられました。なぜこのようなことが起こったのか。それは脳の中で記憶を司る「海馬」と、感情を司る「偏桃体」が近いために、偏桃体で感じたストレスが海馬の萎縮につながった可能性があると考えられています。

このように、認知機能にはストレスも影響しています。楽しみのない交流はむしろネガティブに働く可能性があるので、心地よい交流を楽しむことも大切です。

集まりなどに参加する場合、長続きのコツはありますか?

まずは楽しめること。そして誰かの役に立つことが、目的意識を高めて継続につながります

「自分のため」だけでない活動

認知機能は長年の間に低下していくものなので、予防対策も生涯にわたるほど長期間続ける必要があります。1週間や1か月間で終わってしまっては意味がありません。何らかの集まりで人との交流を図り、長く続けるためには、まず自分が楽しいと思えること、興味を持てることが大切です。義務感からの参加は継続につながりません。

さらに、「目的意識」があることも重要になります。人と会うのは「自分の健康のため」と思っても、それだけではなかなか長続きしないものです。これが人の役に立つ、相手に喜んでもらえるようなことであれば、よりモチベーションがアップします。

たとえば、保育園での活動といった教育ボランティア。子どもたちのためにもなり、大人同士とは異なる会話することで脳の刺激にもなります。子どもたちに喜ばれ、「また来てね」と言われれば、「人から求められている」という実感が得られ、次に向けてやる気も出てきます。

気の合う仲間をつくる

仲間をつくるということも重要です。そこに「約束」が発生することで、集まりがある日に迷う余地が少なくなります。一人で何かをする場合は「ちょっと休もうかな」という気分にもなりますが、約束している場合は「行かなければ」という気持ちが強くなり、これも継続のポイントになります。

参加の予定が近づいたときに迷うことがないように、「約束」としてしっかりと予定に組み込みましょう。

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